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はじめに
梅毒は,トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum subsp. pallidum, Nichols strain)(以下,TPと略す)の感染による慢性の全身性の性感染症である.
現在行われている梅毒血清反応検査は,2種類の抗原系を用いる方法に大別される.一方はTP由来成分を抗原として用いるTP抗原法で,FTA-ABS(fluorescent treponemal antibody - absorption test)法,TPHA(Treponema pallidum hemagglutination assay)法などがある.他方はカルジオライピン,レシチンのリン脂質を抗原とする脂質抗原法で,通常STS(serologic test for syphilis)法と呼ばれている.STS法にはガラス板法,RPR(rapid plasma reagin)カード法などがある.
これらの検査法は,1900年初頭のワッセルマン(Wassermann)法に端を発し,梅毒患者の診断や治療に活用されてきた.1990年代には蛋白質精製技術や遺伝子工学技術の向上とともに,分析装置の開発が進み,感度や特異性に優れた自動化が可能な検査法が多数開発された.
現在,梅毒検査は,献血時や手術前,妊婦検診など,一般健常者に対するスクリーニングとして,また,梅毒と診断された患者の病期の判定や治療効果を確認するために実施されている.わが国では,前者のようなスクリーニング検査が全検査の大半を占めると言われている.
さらに近年,臨床症状がみられない無症候梅毒が増加しており1),血清反応の重要性がさらに増している.
本稿では,現在利用されている梅毒検査法の特徴について論じ,今後の検査法のあり方について考察したい.
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