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■心筋梗塞の成因と病態
心筋梗塞は,冠動脈硬化による閉塞性血栓による動脈管腔の狭窄により引き起こされ,その病理は,動脈の内側に粥状(アテローム性)の隆起病変(プラーク)が形成される粥状動脈硬化である.従来は,長い時間をかけて成長したプラークにより管腔内の狭窄度合いが増して閉塞することによって心筋梗塞が引き起こされると考えられていた.しかし,現在では狭窄の程度が軽くても,ゲル状のコレステロールエステルに富み,炎症性細胞が多く薄い線維性被膜に包まれた柔らかな不安定プラークが,血管内皮傷害や血管壁のずり応力ストレス,炎症の進展などによって破裂し,それを契機に血小板凝集,フィブリン沈着などで血栓が形成され,冠動脈内腔が閉ざされるケースも多いことが明らかになっている.この血栓により完全閉塞を生じた場合はST上昇型心筋梗塞,不完全閉塞の場合は非ST上昇型心筋梗塞,または不安定狭心症となる場合が多い.近年では,心臓突然死も含めてこれらを急性冠症候群(acute coronary syndrome,ACS)1)と称している.
粥状動脈硬化プラーク形成は,好発部位に単球の接着が起こり血管内皮細胞上に発現した接着分子を介して内膜内に浸潤・蓄積する.また,低比重リポ蛋白(low density lipoprotein,LDL)などのリポ蛋白も動脈壁内へ侵入し,アンジオテンシンをはじめとする脈管作動性物質などを介して酸化ストレスにより酸化変性を受け,酸化LDLとなり,単球由来のマクロファージの活性化を招く.酸化LDLは,マクロファージ細胞表面に発現するスカベンジャー受容体により細胞内に際限なく取り込まれて,マクロファージは泡沫細胞となる.その過程で炎症性サイトカインや成長因子の産生・放出により血管平滑筋細胞の形質転換をもたらして,収縮型から分泌型として内膜への遊走と増殖を引き起こし,催炎症作用,催血栓作用などに誘導することがプラークの進行や破綻に寄与している2).
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