技術講座 微生物
末梢血におけるマラリア原虫の検出
大友 弘士
1
,
赤尾 信明
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学分野
pp.311-316
発行日 2008年4月1日
Published Date 2008/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102040
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新しい知見
最近の遺伝子工学の進歩により,ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)法による病因原虫特異遺伝子の検出も可能になったが,医療機関を問わずいつでもできる検査法ではない.その点,本稿で述べる抗原検出法は特別な装置や顕微鏡を必要とせず,簡便性,再現性,迅速性が高いものである.特異抗原に対するモノクロナール抗体が帯状にコーティングされた濾紙(ディップスティック)に少量の末梢全血をしみこませると,陽性検体ではモノクロナール抗体の位置に赤い線が出現する.HRP(histidine-rich protein)-2検出系が熱帯熱マラリア原虫の診断にやや優れているが,稀に高度の虫血症を呈する患者でも偽陰性を示すことがあるので注意を要する.また,原虫性乳酸脱水素酵素(parasite lactate dehydrogenase,pLDH)検出系も補助診断として有用性が高い.いずれも,流行地滞在中の発熱時の自己診断にも利用でき,有効なスタンバイ治療の可否を判断することも可能である.
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