失敗から学び磨く検査技術―臨床化学編
酸性尿でのβ2-マイクログロブリン測定
松田 ふき子
1
1三重大学医学部附属病院検査部
pp.254-256
発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102025
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近位尿細管機能検査としての尿中β2-マイクログロブリン測定
尿中β2-マイクログロブリン(β2-microglobulin,β2-M)は,分子量11,800ダルトンの低分子蛋白で,糸球体基底膜を容易に通過するが,その後近位尿細管で約95%が再吸収されて異化される.そのため通常は尿中へはわずかにしか排泄されない.尿細管が障害されて再吸収能力が低下すると尿中へのβ2-Mの排泄が増加する.糸球体機能が低下する場合も二次的に尿細管機能が障害されることが多く,β2-Mの尿中への排泄が増加する.
血中のβ2-M濃度が4.5mg/dl以上の高値となる場合も,尿細管での再吸収能力を超えるため尿中へのβ2-Mの排泄が増加する1).β2-Mは有核細胞膜表面に存在し,組織結合抗原であるHLA(human leukocyte antigen)クラス抗原のL鎖として免疫応答の役割を担っているが2),悪性腫瘍や自己免疫疾患などで細胞の増加や破壊が亢進すると血中濃度が増加する.そのため尿細管機能障害がなくても尿中への排泄が増える.また,腎血流量の低下に伴い異化が低下する場合も血中濃度が増加し,尿中へのβ2-M排泄が増加する3).
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