疾患と検査値の推移
家族性地中海熱
山下 浩平
1
,
三好 隆史
1
1京都大学医学部附属病院血液・腫瘍内科
pp.29-34
発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101964
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疾患の概説
家族性地中海熱(familial Mediterranean fever,FMF)は,遺伝性周期性発熱症候群(hereditary periodic fever syndrome)の一つとして知られ,典型的には,小児期から青年期にかけて,数日間しばしば腹痛や単関節炎症状などを伴った発熱発作を周期的に繰り返すという常染色体劣性遺伝の疾患である.1945年にbenign paroxysmal peritonitisとして第1例が報告されて以来,その名が示すとおり,ユダヤ人やトルコ人など地中海沿岸地方の民族を中心に数多く報告され,日本人には極めて稀な疾患と考えられてきた.発作時には,多くの症例で血液検査において好中球増加とC反応性蛋白(C-reactive protein,CRP)上昇などの異常を認め,炎症部位が存在する場合には多核白血球の浸潤が認められることから,その病態形成に食細胞,特に好中球が深く関与すると考えられてきた.しかしながら,その炎症病態の詳細な機序はいまだ明らかではない.
1997年,16番染色体の短腕に存在するMEFV遺伝子が同定され,この遺伝子変異がFMFの発症および病態形成に深く関与することが報告された1).MEFV遺伝子は10個のエクソンから構成され,現在までに60近くの変異が報告されている.変異はエクソン2および10に集中し,そのなかでもエクソン2に存在するE148Q,エクソン10に存在するM694V,M694I,M680I,V726Aの遺伝子変異が多く報告されている(図1)2).
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