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私の演題発表は学会第一日目の一番最初ということもあり,その前日に宮崎へ発った.当日,途中の駅で人が溢れていた.信号機の故障と人身事故のダブルパンチで電車が大幅に遅れているらしい.時計を見ると出発の45分前を切っており,飛行機に乗り遅れると明日の発表に間に合わなくなる.前代未聞の出来事の当事者になるのではないかと血の気の引く思いをした.大雨の中びしょぬれになりながらなんとかタクシーを拾い,空港に着いたのは出発予定10分前.飛行機出発が予定より遅れていたため何とか間に合った.羽田を発ち1時間40分ほどで宮崎空港に着いた.宮崎は雲ひとつない快晴で風は少し強かったがとても心地良いものであり,2時間前までの嫌な出来事を忘れさせてくれた.
さて,第56回日本医学検査学会が宮崎県シーガイアで行われた.南国リゾート地らしくヤシの木が並び,海に面したホテルに泊まることができ,私はリラックスした状態で明日の発表に臨むことができた.私の演題は新しく発売された副甲状腺ホルモンであるインタクトPTH測定試薬の基礎的検討と健常者分布の検討であった.基準範囲の設定方法はいまだに統一されていないのが現状である.わが国ではパラメトリックな手法を用いるために標本集団は正規化すべしとなっているが,CLSI(米国臨床検査標準化協会,旧NCCLS)はノンパラメトリックな方法を推奨しているので正規化そのものが必要ないとしており,もはや入り口から見解が異なっている.本学会でも外れ値の除外にSmirnov-Grubbs棄却検定やDixon法を用いるなど演者によってさまざまであった.私もインタクトPTHの基準範囲を複数の手法で求めたが,どうも従来法の基準範囲よりも高値側にシフトしている.その原因を調べてみると,統計的手法に誤りがあるわけでなく,基準個体である当院職員のビタミンDが総じて不足しているためであることがわかった.ビタミンDが低くなればCaも低くなり,そのためインタクトPTHが高くなるということである.そういえば当院は周りを建物に囲まれているから朝職場に足を踏み入れたら次の日の朝まで日光に当たらない.東京では本当に日光に当たらないなと宮崎のリゾート地で感じた.
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