特集 看護部のマネジメントは病院移転でどう機能したか――日本赤十字社医療センターの場合
―病院移転の実際[その2] 「什器・物品」―円滑な什器・物品移転を実現する準備と組織づくり
古川 祐子
1
1日本赤十字社医療センター看護部
pp.798-802
発行日 2010年8月10日
Published Date 2010/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101824
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はじめに
移転前の日本赤十字社医療センター(以下,当センター)は建設から約40年を経て老朽化しており,近年の医療環境の変化に対応できない構造となっていた。特に急性期病院である当センターでは,高度な医療機器が一般病棟でも日常的に使用され,狭い病室をさらに狭くしている現状があった。トイレも狭く,段差のある浴室など,療養環境としても過ごしやすいものではなかった。
また,建設当時は最新の機器であったボックスコンベアやエアシューターを備えたナースステーションも現在の医療スタッフ数に合った広さではなく,常に人でごった返している現状があり,動線の悪い物品棚や薬品棚の配置,片隅にある使えない処置ベッドなど,職員にとっても悩みの種となっていた。
そのような環境の中で,いかに動きやすく使い勝手のよい環境にできるか,それぞれの部署で少しずつ工夫を重ねながら過ごしてきた歴史があった。限られた構造の中でも創意工夫しながら前向きに医療に携わる風土があったが,それは各部署のオリジナルを生じさせる要因となっていた。結果的に古い病院にありがちな「いつのものか分からない資料や機器」「持ち主の分からない私物」「多量の常備消耗品」,さらに「期限切れの医療消耗品」まであちこちに保管されている部署もあった。ローテーションの医師や看護師から物品配置の標準化を望む声もあったが,狭い空間の限界があり実現には至っていなかった。
そこで医療安全の観点から,少しでも整理整頓を目指そうと,全部署で5S活動推進に取り組んでいたが,本稿では看護部門が直接関わった什器・物品の移転について紹介したい。
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