一般検査室から私の一枚
奇怪かつ奇妙な上皮細胞
藤 利夫
1
1国立病院機構九州がんセンター臨床検査部
pp.663
発行日 2007年7月1日
Published Date 2007/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101770
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巨大化し奇怪かつ奇妙な成分がみられる.二,三個の上皮細胞なのか,それとも複数個が複雑に絡み合っているのかは不明である.細胞質は透明で光沢感があり,ややわかりづらいが左下中心部に核様の所見もみられる.材料は尿沈渣で,悪性リンパ腫治療中の症例である.無染色では,円柱や通常の尿細管上皮細胞の出現も一部認めた.したがって,本症例は薬剤投与の影響による尿細管障害が疑われ,反応性に変化した尿細管上皮細胞と思われる.
この像から“龍踊り:五穀豊穣を祈る雨乞い祭り”を想像した.一見,天に舞い上がった龍が月を飲み込み雲を呼び,雨を降らせようとする動きにも見える.尿細管上皮細胞は多種多様で,反応性ともなると想像を絶する変化をとるが,日常生活の光景に映し出される像と交差し,尿沈渣検査の魅力が溢れんばかりの一枚である.
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