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Bartter症候群とGitelman症候群の病態,臨床症状と原因遺伝子
Bartter症候群は,1962年,Bartterらにより初めて報告された遺伝性尿細管疾患で,乳幼児期に発症する脱水,低カリウム(K)血症を主症状として,著しい高レニン血症,高アルドステロン血症を伴い,腎組織所見では傍糸球体装置の増生を特徴とする疾患として報告された1).その本質は図1に示したヘンレの太い上行脚(thick ascending limb of Henle,TAL)の機能異常であり,Bartter症候群の原因遺伝子は,この部位のイオン輸送に関与している3種類の輸送体と輸送体結合蛋白質,類似の症状を呈するものとしてカルシウム(Ca)感受性受容体(Ca sensing receptor,CaSR)の計5種類の遺伝子異常が報告されている(表).
最初に原因遺伝子として報告されたNa+-K+-2Cl-共輸送体(NKCC)は2),新生児Bartter症候群あるいは古典的Bartter症候群と呼ばれていた最も重症で典型的なBartter症候群と臨床症状が一致しており,それに次いで報告されたROMKチャネルも同様に重症のBartter症候群を呈することが示された3).3番目にCLCNKB(chloride channel Kb)と呼ばれるClチャネルの異常に基づくBartter症候群が報告されたが4),その後に行われた多数の症例解析の結果,このチャネル異常によるBartter症候群は臨床像が多様であり,出生直後に重度の脱水を示すものから,11歳時に発症したものまで種々であることが報告された5).さらに,一部の症例では,後述のGitelman症候群というBartter症候群と類似した疾患の特徴的所見である低Ca血症と低マグネシウム(Mg)尿症を伴うことも報告された.これは,図2に示したように,Gitelman症候群の病変部位である遠位曲尿細管(distal convoluted tubule,DCT)にもこのCLCNKBが存在して,Cl輸送に役割を果たすことによると考えられている.4番目に報告されたBarttinの遺伝子異常はBartter症候群に加えて感音性聴力障害を伴い,それまでに報告された遺伝子異常によるBartter症候群とは特徴を異にしている6).このBarttinは,腎に存在するCLCNKBと腎と内耳に存在するCLCNKAのClチャネル機能発現に必須であり,その遺伝子異常は内耳CLCNKAの機能異常により難聴を生じることが示された.また,CLCNKAとCLCNKBの両者の機能喪失によるBartter症候群では聴力障害を伴い,Barttinの遺伝子異常によるものと同様の臨床像であることが確認されている7).
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