一般検査室から私の一枚
卵巣腫瘍患者尿にみられた悪性の異型細胞
長濱 大輔
1
1名古屋大学医学部附属病院医療技術部臨床検査部門
pp.379
発行日 2007年4月1日
Published Date 2007/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101685
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肉眼的血尿もなく,尿定性・半定量検査は正常であった.ところが,尿沈渣無染色標本の全視野鏡検(10×10)で,数か所に細胞のcluster(集団)を認めた.強拡大(10×40)で細胞形態を観察すると,N/C比(nucleocytoplasmic ratio,核細胞質比)は大で,著明な核小体があり,核膜の肥厚を認めた.年齢と性別を加味すると,筆者の脳裏には卵巣腫瘍細胞が浮かんだ.これがfistula(瘻孔)を介して尿に出現したのであろうと考察した.
Sternheimer染色変法(図)の細胞形態は,N/C比の大きな類円形細胞で,核は青染している.核形は不整で,腫大した2~3個の明瞭な核小体を有し,核縁は肥厚している.細胞質は分泌物を思わせるような明るい赤染性で,小球状の脂肪球を認めた.このほかにも腺腔を形成するような異型細胞のclusterを認めた.また,背景はクリアであった.細胞診断学的には卵巣明細胞腺癌(clear cell adenocarcinoma)を疑った.
臨床診断は悪性の卵巣腫瘍,組織型は腺癌(adenocarcinoma)であった.一般検査室での貴重な経験の一例である.
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