トピックス
2000年ESC/ACC心筋梗塞再定義を受けて
清野 精彦
1
,
高野 照夫
1
1日本医科大学内科学第一講座
pp.1340-1342
発行日 2003年11月1日
Published Date 2003/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101638
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心筋細胞傷害を診断するための血液生化学的マーカー(図)は,細胞質可溶性分画に存在するCK,CKMB,ミオグロビン,心臓型脂肪酸結合蛋白質(heart-type fatty acid-binding protein;H-FABP)と,筋原線維を構成するミオシン軽鎖,トロポニンT(TnT)などが活用されている.虚血性心筋細胞傷害が生じると,まず心筋細胞膜が傷害され,細胞質可溶性分画のマーカーが循環血中に遊出する(図右上段).虚血が軽度で短時間のうちに解除されればマーカーの上昇は軽微かつ短時間であり,心筋細胞傷害は可逆的である可能性が考えられる.急性冠症候群でも血小板に富む白色血栓による非完全狭窄病変では,microemboliにより微小梗塞が生じる場合もあり,非ST上昇梗塞,非Q波梗塞,微小心筋傷害を合併した不安定狭心症などがこの病態に一致する1,2).
さらに虚血が高度(赤色血栓による完全閉塞)かつ長時間に及んだ場合には,心筋細胞蛋白質分解酵素の活性化により筋原線維が分解され,TnT,ミオシン軽鎖などの収縮蛋白質が循環血中に遊出してくる(図右下段).この過程では既に心筋細胞は不可逆的壊死に陥ったものと判断される.なおTnTは,約6%が細胞質可溶性分画にも存在しており,上記両相の傷害を反映して二峰性の遊出動態を示す2).
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