トピックス
Cdk5
富澤 一仁
1
1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科細胞生理学
pp.1455-1458
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101155
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Cdk5とは
サイクリン依存性キナーゼ5(cyclin-dependent kinase5,Cdk5)は,1992~1994年にかけて三つの研究グループがそれぞれ別の目的で発見したセリン-スレオニン指向性リン酸化酵素である.一つは,増殖能を持たない神経細胞においてCdc2(cell division cycle2)活性を有する酵素として精製・同定された1,2).もう一つは,サイクリン依存性キナーゼのファミリー遺伝子としてクローニングされた3).さらに,アルツハイマー病(Alzheimer disease)脳において見られる神経原線維変化は,細胞骨格蛋白質の一種であるタウ蛋白質が異常にリン酸化されたものであることが知られているが,タウ蛋白質をリン酸化する酵素として同定された4).
結晶解析より,Cdk5の構造はサイクリン依存性リン酸化酵素と近似していることが判明している5).しかし,サイクリン依存性リン酸化酵素が,サイクリンと結合し活性化するのに対し,Cdk5は,p35あるいはp39と呼ばれる活性化因子と結合することにより活性化される2,6)(図1).また,サイクリンが増殖細胞にのみ強く発現しているのに対し,p35とp39とは,増殖能を有さない神経細胞で強く発現している.そのため,Cdk5の高い活性は,神経細胞において認められる2,6).最近,膵β細胞において,高いCdk5活性が存在し,同酵素がインスリン分泌を制御していることが明らかになった7).Cdk5が2型糖尿病治療の標的分子として重要であることが示され,Cdk5の新しい生理機能として注目されている.
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