トピックス
Clostridium difficile toxin Bの検査
福田 砂織
1
1天理よろづ相談所病院臨床病理部
pp.1453-1455
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101154
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はじめに
抗菌薬や抗癌剤が投与された後に発症する下痢症(抗生物質起因性下痢,antibiotic-associated diarrhea,AAD)は,投与された薬剤により腸内フローラが撹乱され,健常な消化管内では劣勢な微生物が増殖することが主な原因である.原因となる微生物は,Clostridium difficileをはじめ,Staphylococcus aureus,エンテロトキシン産生性Clostridium perfringens,およびCandida albicansなどが報告されている.
AADの主要な原因菌であるC. difficileは偏性嫌気性グラム陽性(Gram-positive)の芽胞形成桿菌で栄養型は酸素に触れると死滅しやすい.病原因子は腸管毒素toxin Aとその100~1,000倍強い細胞毒性をもつtoxin Bとがあり,軽度下痢症から重篤な偽膜性腸炎までさまざまな病態をとる.また,芽胞形成菌のため乾燥に強く,各種消毒剤にも耐性であるため,接触による院内感染の原因となりやすい.しかし,C. difficile関連腸炎(Clostridium difficile-associated diarrhea,CDAD)の検査は,重要性の認識不足や嫌気性菌を取り扱う設備や経費などの面から実施している施設は限られている.このためわが国における感染の実態はいまだ把握されていない.
本稿ではtoxin Bを中心に解説する.
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