検査じょうほう室 生化学
便ヘモグロビンは大腸がんの指標となりうるか ?
東塚 伸一
1
,
神野 勉
2
1財団法人兵庫県予防医学協会
2財団法人兵庫県予防医学協会保健環境部保健検査科
pp.1432-1434
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101148
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はじめに
便ヘモグロビンの測定方法には化学法と免疫法とが存在するが,大腸がんのスクリーニングには食事制限が不要で,感度・特異度に優れている免疫法が用いられる.
免疫法による便中のヘモグロビンの測定は,免疫便潜血検査,便中ヘモグロビン検査,さらには定量法の場合に便中ヘモグロビン精密測定など,さまざまな名称で表現されているが,本稿では便ヘモグロビン検査〔以下,便hemoglobin(Hb)検査〕とする.
近年,食生活の欧米化,特に動物性脂肪の摂取量の増加など1)により,大腸がんの罹患率は年々増加しており,1999年度の患者調査によると,結腸がんおよび直腸がんを併せると226,000人(男126,000人,女90,000人)2),また2004年度の人口動態統計によると大腸がんによる死亡者数は40,037人で,前年度に続き1,000人以上の増加となっている3).そのような背景のなか,便Hb検査をスクリーニング手法とした大腸がん検診は,自治体が実施する地域検診をはじめ,各種健康診断にも組み込まれるなど積極的に実施されており,その効果は厚生労働省の研究班報告4)により証明されている(しかしながら,受診率は依然として低く,早期発見・早期治療による医療費の抑制,死亡率の低下には至っていない).
このように便Hb検査が,大腸がん発見に効果を発揮しているなら,“大腸がんの指標”,つまり大腸がんのマーカー的な役割が果たせないか?との考えかたもできなくはない.
今回,大腸がん検診で発見された大腸がんや各種疾患の便Hb検査結果を基に検証してみたい.
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