増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
2.生化学検査
ノート 肺線維化マーカーの測定意義
服部 登
1
,
河野 修興
1
1広島大学大学院分子内科
pp.1170-1171
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101078
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はじめに
現在,厳密な意味で,肺に発生している線維化を検出・評価しうるマーカーは存在しない.線維化は,コラーゲンを中心とした細胞外マトリックスの過剰な沈着と捉えることができるので,血液中にて検出されるヒアルロン酸やⅣ型コラーゲン,プロコラーゲンⅢペプチドは,体内における細胞外マトリックスの過剰産生を意味し,肺における線維化を検出するマーカーとなりうる可能性は示唆される.しかしながら,これらの細胞外マトリックスを反映するマーカーは,体内で最大重量をもつ臓器である肝臓における線維化の指標として使用されることがほとんどであり,肺線維症の存在下にて上昇することは指摘されているもののその頻度などは不明であり,実際には臨床応用されてはいない.
現在,肺線維化に関連した血清マーカーとして臨床応用されているのは,肺の線維化が同時発生している場合が多い間質性肺炎の病態下で上昇することが知られているKL-6やサーファクタント蛋白質(surfactant protein)AおよびD(SP-A,SP-D)などである.これらの間質性肺炎関連マーカーは,実地臨床では肺線維化マーカーとして誤認・代用されている感があるが,間質性肺炎と肺線維症は本来区別されるべき病態であることは,しっかり認識しておかねばならない.
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