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はじめに
肺炎とは肺実質(肺胞上皮細胞とそれに囲まれた肺胞腔)および肺間質(肺胞腔以外の肺胞を構成している組織)を含む肺胞領域に起こる炎症性疾患を総称した名称である.この肺実質性肺炎と間質性肺炎とは病変の部位だけでなくその成り立ちが大きく異なる.前者では肺胞腔内に炎症細胞の浸潤が生じるが,肺胞壁への影響が少ないため抗菌剤治療などにより治癒すると肺胞は元の状態に戻る.一方,間質性肺炎は肺胞隔壁に主病変が存在し,炎症の修復過程に線維化が生じることが多い.臨床の場ではこれらの肺炎の鑑別診断は,しばしば困難なことが多い.KL-6は実質性肺炎では正常値を示し,間質性肺炎では高値となる場合が多く,間質性肺炎の補助診断として有用である.
間質性肺炎のうち原因不明なものについては特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias,IIPs)とし,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis,IPF)およびIPF以外に大別される.IPF以外のものとして,非特異的間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia,NSIP),特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia,COP)/閉塞性細気管支炎症性器質化肺炎(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia,BOOP),急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia,AIP),呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患(respiratory bronchiolitis-causing/associated interstitial lung disease,RB-ILD),剝離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia,DIP),リンパ球性間質性肺炎(lymphocytic interstitial pneumonia,LIP)が含まれる.厚生労働省のびまん性肺疾患研究班による「特発性間質性肺炎(IIPs)の臨床診断基準―第4次改訂―」が作成されているが,この診断基準で重要なことはIPFを的確に診断することである.現時点ではIPFの診断には高分解能CT(high-resolution CT,HRCT)所見が最も有用である.典型的なIPFのHRCT所見は肺底部,胸膜直下優位に明らかな蜂巣肺所見を伴う網状影である.しかしHRCTの読影は個人の技量の差によって左右される.血清マーカーであるKL-6は第4次改訂の特発性間質性肺炎の臨床診断基準に導入されており,KL-6はIPFの補助診断,および病勢の指標として有用であることが示されている.しかし,IPF以外のIIPsについてのKL-6値の検討は乏しいのが現状である.
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