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はじめに
医療はポストゲノム時代といわれ,遺伝子に基づくオーダーメイド医療に対する期待はますます高まっている.遺伝子研究の進歩は,遺伝子検査として臨床の場で多くの恩恵をもたらすものとおおいに期待されている.遺伝子検査は研究段階にあるものから感染症のように既にキット化されているものまで,項目またそれらを実施する施設は拡大している.しかし,臨床検査のうち遺伝子検査は当初の期待に反して,明らかに伸び悩んでいるのが現状である.その原因としては,遺伝子検査の保険適応がまだ一部の感染症に限られており,諸経費がかかるなど採算ベースに載りにくいことが大きいと考えられる.そのため病院検査室では積極的な初期投資および導入拡大はなされず,大手ラボや大学の研究室に検査を依頼するケースが多い.さらに,臨床診断として厳しい管理の下,精度・品質を保証するという視点に欠けていたことは否めない.これは仕様の十分な標準化がされてこなかったためと分析している.遺伝子検査は遺伝子市場拡大の観点からまさしく再考を行う時期に来ているといえる.臨床検査分野で遺伝子検査を広く普及させるには臨床的意義が見いだされるものでなくてはならず,同時に将来それを担う人材の育成と,診断薬と自動化技術の開発導入が急務である.
そこで,遺伝子検査を進歩させるには,現状を十分に把握し,あらゆる問題点を抽出して,精度を保証するために必須な方策(ガイドラインの作成や技術の向上)を行い,臨床検査全体の活性化につながるいっそうの努力をすることが必要である.さらに,臨床の現場に新しい検査技術を積極的に導入する機運を促し,それらに関する有用な情報を診療に提供できればより未来に開けた遺伝子検査の拡大につながるものと考える.
これからの遺伝子検査は,遺伝子解析の研究レベルの議論だけではなく,技術開発や市場拡大を視野に入れ,産業界や診療現場との積極的な情報交換および取り組みから発展させていき,実学としての遺伝子検査学を臨床検査および日常診療の中で認知させていく必要があろう.そのためには常に具体的な戦略を提示し,実行し展開していくことが重要である.
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