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膵癌・胆道癌における腫瘍マーカー
解剖的な位置関係のため消化器癌のうちで最も組織採取が難しく病理学的な確定診断の得にくい膵癌・胆道(胆管・胆嚢)癌では,癌の補助的診断として,または画像的に捉えにくい癌治療効果判定を補う意義として腫瘍マーカーの重要性は高い.CA(carbohydrate antigen,糖鎖抗原)19-9,CEA(carcinoembryonic antigen,癌胎児性抗原)を中心にSpan-1,DUPAN-2,SLX(sialyl Lewis X-i antigen)などが代表的であり,さらに膵癌独自の腫瘍マーカーとして随伴性膵炎を反映したエラスターゼ1も使用される.古典的な腫瘍マーカーではないが遺伝子異常が解明されてきており,特に膵癌のK-ras遺伝子変異は有名である.疑わしい細胞や組織の遺伝子を調べる方法であり血清で測定する通常の腫瘍マーカーとは異なるが,得られた細胞や組織の病理学的診断が難しい場合にK-ras遺伝子変異解析は癌の指標として使用可能で,これも広義の腫瘍マーカーといえよう1).
最も古典的な腫瘍マーカーであるCEAの出現後,抗原性の弱い糖鎖に対する抗体を測定する手法が開発され,モノクローナル抗体として1979年にCA19-9,これに続き1980年代にSpan-1,DUPAN-2などが出現した.CEAは膵癌のほか多種の癌で上昇し,かつ陽性率は50%程度に留まる,Span-1,DUPAN-2などはCA19-9と比べると慢性肝疾患などで疑陽性率が高いなどの理由で,現在でも膵癌・胆道癌の腫瘍マーカーはCA19-9が中心である.ただし,ルイス抗原(Lewis antigen)系の影響によりCA19-9が偽陰性となる場合はこれらのマーカーが代用される.また,DUPAN-2はその他の腫瘍マーカーとの相関が低いとされ,組み合わせにより診断率が向上する.CA19-9,Span-1,DUPAN-2などはⅠ型糖鎖に分類されるのに対して,SLXはⅡ型糖鎖に分類され,陽性率は50%程度と若干低くなるが,ルイス抗原系の影響は受けない利点がある.
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