失敗から学び磨く検査技術 病理標本作製法
固定時に生ずるアーティファクト 固定不良 短すぎる固定による組織障害
吉村 忍
1
1防衛医科大学校病院検査部病理
pp.1464-1467
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100908
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図1は肝臓のヘマトキシリン・エオジン染色(hematoxylin-eosin stain,以下HE染色)標本のマクロ像である.中心部は円形の穴が空いている標本となっている.図2は同じブロックより作製したマッソン-トリクローム染色(Masson-trichrome stain)のミクロ像である.中心部の円形空隙辺縁部は厚さが不均一に薄く,細胞質は間隙の目立つ内容物が溶出した染色性の悪い状態で,膠原線維の染色性は消失している.核は核膜が薄くクロマチンが不均等に溶出した間隙の多い状態となっている.細胞層にして15~30層程度外側で赤色系色素の染色状態も青色の膠原線維も正常な染色性を示し,本来の細胞状態が観察されている.いずれも標本としては総合的に見た場合使用不可と考えられるアーティファクトの強い標本である.
考えられる原因
パラフィンの浸透不良が直接の原因である.浸透不良のまま強引な薄切処理で標本を作製した結果,パラフィンが浸透していなかった中心部の組織が欠落した標本となっている.ホルマリンによる固定を十分に行い,24時間程度の脱水・パラフィン包埋処理を行ってあればこのような状態になることは考えにくい.
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