失敗から学び磨く検査技術 病理標本作製法
固定時に生ずるアーティファクト 固定不良―固定不良対処法としての乳腺メタノール-ホルマリンの効果
吉村 忍
1
1防衛医科大学校病院検査部病理
pp.466-468
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100656
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標本は乳癌手術例腫瘍部分の同一患者の標本である.図1は明らかに腫瘍細胞の収縮破壊像が認められ,診断に支障をきたす像となっている.図2は同一例の腫瘍部を切り出し後,メタノール-ホルマリン(1:1)で2日間十分に固定した標本である.若干の収縮は見られるが問題のない標本である.
考えられる原因
乳癌手術による乳房摘出検体は胸壁側への浸潤を観察するため摘出直後には切り出しは行わず,ある程度全体を固定してから切り出しを行う事例が多い(図3).その間,腫瘍部分はホルマリンとの接触は少なく徐々に自家融解が起こり細胞自体が壊れやすくなっている(図4).自家融解の影響が強い状態でのホルマリンによる通常の固定条件で脱水・パラフィン包埋処理を行うと,腫瘍細胞は左図のように収縮して細胞間結合が離され,バラバラになった状態となり所見を取る際に大きな問題となる.
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