絵で見る免疫学 基礎編(56)
宿主とウイルスの攻防(4) ウイルスの逆襲 その1
高木 淳
1
,
玉井 一
2
1アボットジャパン(株)器機診断薬事業部・営業学術
2栄光病院
pp.728-729
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100695
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- 文献概要
ウイルスが細胞に感染すると,感染細胞はインターフェロン(interferon,IFN)を産生し近隣の細胞に抗ウイルス作用を誘導する.次いで,NK細胞(natural killer cell),細胞障害性T細胞が活性化され感染細胞を破壊し,さらにウイルスに対する中和抗体を産生してウイルスを中和しこれを排除する.しかし,ウイルスは,これら宿主の攻撃から回避するために種々の技を持っている.抗原性の変異は最も効果的な技である(次号に記す).
サイトカインからの回避
ウイルス感染細胞が産生したIFNは近隣の細胞のIFNレセプターに結合するとこの細胞は抗ウイルス作用を発揮する.すなわち,侵入したウイルスの蛋白質合成を阻止し,かつウイルスRNAを分解する(前号図3(2)と(3)を阻害する).エプスタイン-バーウイルス(Epstein-Barr virus,EBウイルス)はIFNによるリボソームにおける蛋白質合成阻害する物質を,ワクシニアウイルスはRNAの分解を阻止する物質を産生し感染細胞におけるIFNの効果を阻害する.また,ウイルスにはサイトカインレセプターの類似分子を作り出すものがある.粘液腫ウイルスはIFNγレセプター,ショープ線維腫ウイルス(Shope fibroma virus)はTNFレセプター,EBウイルスはIL-10レセプターの類似分子を作り出す.これら偽サイトカインレセプターを細胞外にばら撒くと,偽レセプターとサイトカインとは結合しサイトカインの活性が中和されその機能が失われる(図1).
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