検査じょうほう室 血液 血液染色のコツ
アルカリホスファターゼ染色
武内 恵
1
1慶應義塾大学病院中央臨床検査部
pp.348-351
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100630
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
好中球アルカリホスファターゼ(neutrophil alkaline phosphatase,NAP)は,アルカリ領域に至適pH(8~10)を有するホスフォモノエステルを加水分解する酵素である.長年,血液細胞では成熟好中球の二次顆粒内に存在するとされてきた.ごく最近の論文で,好中性顆粒内より,むしろ細胞膜(plasma membrane)に多量発現していることから,好中球の細胞内で転写・翻訳されて生合成され,その後に細胞膜へ移行し,膜結合酵素として局在する.さらに,NAPの発現には分葉核球への分化・成熟が必須条件であり,かつ顆粒球コロニー形成刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor,G-CSF)の存在が不可欠と報告されている1).
血中のG-CSF濃度が上昇する炎症や感染症などの反応性の白血球増多症ではNAP活性は上昇するが,慢性骨髄性白血病では低値となる.また,真性多血症と二次性多血症との鑑別,特発性夜間血色素尿症と再生不良性貧血との鑑別,さらに急性白血病の病型診断や異形成の診断補助手段としても利用されている.しかし,NAP活性の動態は一様ではなく,その全機序については,いまだ明確に解明されてはいない.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.