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Q貧血では血小板が多いか
貧血では血小板が多いように見受けられますが,なぜでしょうか.その理由を教えてください.(茂原市 Y. F.生)
はじめに
貧血とは,血液中のヘモグロビン(Hb)濃度が低下した状態のことをいいます.WHO(World Health Organization,世界保健機関)の基準では,成人男性で13g/dl未満,成人女性で12g/dl未満を貧血と定義しています.ヘモグロビンは体の中の筋肉や組織に酸素を供給する大切な役目を担っていますが,貧血の程度や原因は多様です(図).原因は大きく分けて,(1)血球産生の低下,(2)赤血球の破壊の増大(溶血),(3)血液の喪失,に分類できます.血球産生の低下は,造血幹細胞の異常や幹細胞に対する抗体などで引き起こされますが,造血に必要なサイトカインの低下やビタミンB12・葉酸・鉄などのDNA合成やヘモグロビン合成の材料不足なども貧血の原因となります.つまり幹細胞から赤血球に至るどの成熟過程が障害されても貧血を発症します.一方,赤血球の破壊の増大は,種々の原因による溶血が造血能力を上回ると貧血となります.血液の喪失は,急性失血では急激な貧血となりますが,慢性に持続するゆっくりとした出血では鉄欠乏性貧血となることが多いようです.
ご質問のように,末梢血の血球算定(血算,CBC測定)をしている時,貧血の検体の中にしばしば血小板数の増加を認めることがあります.しかし,すべての貧血患者が血小板増多を呈するわけではありません.貧血時に血小板増多を呈する理由や詳細なメカニズムは不明のことが多いようですが,その原因の1つに,炎症性サイトカインやエリスロポエチン(erythropoietin,EPO)の関与が考えられています1~4).
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