トピックス
最近の急性肺血栓塞栓症の診断アプローチ
中村 真潮
1
,
加藤 崇明
1
1三重大学大学院医学系研究科循環器内科学
pp.82-85
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100331
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
米国では年間約20万例が急性肺血栓塞栓症(以下,肺塞栓症)と診断され,うち5万人が死亡するとされる.これに対し,わが国の肺塞栓症の臨床診断数は年間28~32例/100万人と推計され,欧米の約25分の1である.しかし,連続剖検例の検討では,欧米では30~64%に肺塞栓症を認めるのに対し,わが国でも11~24%に認められると報告され,臨床診断頻度ほどの差はみられない.これらは,わが国での肺塞栓症の臨床診断率が極めて低いことをも示す結果である.
肺塞栓症の死亡率は高く,ショックとなった重症例の死亡率は18~33%に上る.なかでも早期に診断されなかった場合の死亡率は91%と非常に高率だが,一方で適切に診断されれば死亡率は19%に抑えられる1).さらに,遠隔期の死亡率はわずか0.5%である2).このように,肺塞栓症は急性期をコントロールすれば予後は比較的良好であるため,早期の的確な診断が非常に重要な疾患である.しかし,急性心筋梗塞のような簡便なスクリーニング法がないことが,診断率が低く死亡率も依然高い大きな原因である.
肺塞栓症の診断に関するガイドラインは,海外のいくつかの学会から提唱されている3,4).しかし,発達機器や費用の違いもあるため,わが国の実情に即した診断手順が必要である.特に,わが国では画像診断機器の整備が進んでいるため,欧米各国よりもむしろ進んだ診断手順を取り入れている部分もある(表1)5~7).
本稿では,わが国の実情に照らし合わせた最近の肺塞栓症の診断アプローチについて解説する.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.