特集 癌の臨床検査
II 癌による病態変化をとらえるための検査
4 免疫機能検査
河野 均也
1
Kinya KAWANO
1
1日本大学医学部臨床病理学教室
pp.1505-1508
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917652
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はじめに
われわれの体には,生まれながらにして,自己と非自己を見分けて,非自己の成分を体外に排除しようとする防御機構(免疫機構)が存在し,一方,癌細胞には正常細胞には存在しない抗原が発現していると考えられる.したがって,生体に存在する免疫機能が正しく機能していれば,当然,腫瘍化した細胞はこの免疫機構によって排除されるはずである.しかし,このような免疫機構,特に細胞性免疫機能が障害されると,非自己であるはずの癌細胞を見逃し,増殖を許してしまうことになる.事実,原発性免疫不全症症例や,強力な免疫抑制療法を行っている臓器移植症例などでは,悪性腫瘍の発生が非常に高いことが知られている.また,癌を体内に保有する担癌生体では,その初期から免疫機能の低下が認められることが多く,進行癌ほどそれが著しく,その原因には腫瘍による免疫組織の破壊や,免疫抑制物質の出現,あるいはサプレッサーT細胞の増殖などが考えられている.
本稿では,悪性腫瘍の経過観察中にしばしば実施されている免疫機能検査法とその意義について簡記してみたい.
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