特集 癌の臨床検査
II 癌による病態変化をとらえるための検査
3 血液・尿中酵素の検査
菅野 剛史
1
Takashi KANNO
1
1浜松医科大学臨床検査医学講座
pp.1501-1504
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917651
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はじめに
個体内に腫瘍が存在する場合に,その腫瘍の存在が異常酵素の出現または血清酵素活性値の変動として観察される例が多い.異常酵素の出現の例は腫瘍マーカーとしてとらえることも可能であり,耐熱性アルカリ性ホスファターゼのReganアイソザイムで代表される.また,腫瘍マーカーのように直接腫瘍を診断する検査所見ではないとしても,腫瘍の存在を疑わせ,かつ精密検査への第一歩として重要なのは,酵素活性値が変動する例である.これには白血病,悪性リンパ腫でのLDHの増加などを挙げることができる.しかし,それ以外に腫瘍自体がもつ直接の浸潤性,転移性迫性,閉塞性などの性質のために,酵素活性の変動として観察されるものも数多くある.肝内占拠性病変での膜結合酵素群の変動,骨転移での骨性アルカリ性ホスファターゼの活性上昇などは,その代表的なものである.
ここでは,主に血中の酵素活性の変動からの悪性腫瘍の診断(存在の可能性の推定)について述べることとする.
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