特集 癌の臨床検査
I 癌そのものをとらえる検査
6 組織診
里 悌子
1
,
長村 義之
1
Teiko SATO
1
,
Yoshiyuki OSAMURA
1
1東海大学医学部病理学教室
pp.1466-1474
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917640
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はじめに
組織診は,患者から採取された種々の形状の組織を材料とし,良性・悪性を含めた質的診断を行う病理検査であるが,現在の医療では,癌の最終診断を行う検査として欠かすことのできない一診療分野である.現行の医療保険制度では,1臓器当たりの病理検査料は740点で,迅速診断はさらに1,000点が加算される.また日本病理学会による有試験の病理認定医制度があり,認定医が中心となって組織診を行っている.組織診は病理医により診断が下されるまでに,多くのステップを踏んで標本が作製される検査であり,どんなに小さな組織片でも,採取後最低1日は標本作製に時間がかかり,迅速診断を除いては即日返答のできない点で特異な検査である.また,病理医の診断力,情報評価力,および技師の標本作製能力の両者がそろって初めて的確な診断がなされる性質のものである.
本稿では,組織診として扱う標本の種類,標本作製法,染色法を述べた後に,癌の組織診断を中心に組織標本の見かたを解説する.また癌診断にしばしば用いられる免疫組織化学にも言及し,実例を供覧したい.
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