特集 リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査
3 脂質検査
6.ケトン体
原納 優
1
,
小島 秀人
1
Yutaka HARANO
1
,
Hideto KOJIMA
1
1滋賀医科大学第三内科
pp.1307-1311
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917515
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はじめに
ケトン体はアセト酢酸(AcAc),3—ヒドロキシ酪酸(3—OHBA),およびアセトンを総称したものである.このケトン体は脂肪酸がβ酸化を受けた代謝産物であり,骨格筋,心筋や腎臓でさらに利用され,炭酸ガスと水に分解される.ケトン体の病的意義を理解するには,その代謝調節機構を知る必要がある.
代謝調節機構には,大別してホルモンによるものと基質レベルによるものとがある.ホルモンによるものとしてはインスリンおよびグルカゴンが最も重要であり,インスリン欠乏下には脂肪分解が促進され,肝においては脂肪酸酸化の抑制が外れる.またグルカゴン,エピネフリンなどは脂肪分解を促進するのみならず肝での脂肪酸酸化を亢進するので,重症糖尿病における場合など,このインスリン分泌低下とグルカゴン分泌亢進が共存してケトーシスが発現するのである.基質レベルによる調節では,遊離脂肪酸(FFA)の増加はケトン体生成を増加させるが,肝でグリセロリン酸が増加するような状態にあってはエステル化されるため,ケトン体に酸化される量が減少する.
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