入門講座 血清
細菌凝集反応
松橋 直
1
1東大・血清
pp.811
発行日 1968年11月15日
Published Date 1968/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916517
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Widal反応
スルフォンアミドやペニシリンなどの発見をきっかけとする,化学療法ないし抗生物質療法のすさまじい発展により,腸チフスや発疹チフスなどはちかごろ非常に少なくなってしまった。とはいえ,発熱を伴う疾患で,その原因がつきとめにくいときは,どうしても微生物の感染を疑い,細菌やリケッチアなどの血清反応も行なわなくてはならないので,今日でも依然として,細菌を抗原とする反応が用いられている。
細菌を抗原とする凝集反応の最も典型的なものは,Widal反応である。すなわち,腸チフスにかかると,チフス菌としか反応しないような抗体が,患者血清中に見いだされるようになる。ところが,腸チフスと似たような症状を呈するものにパラチフスAとBがあり,しばしば3者を鑑別できないので,パラチフスAとB菌も抗原として用いる。その原理は,抗原抗体反応の説明によく引用されるものである。この反応は,Gruberが前世紀の終わりに伝染病患者の血清中に,その病気の原因となる細菌を凝集する抗体(凝集素)があることを発見し,Widal(1904)がこれを腸チフスの診断に応用したことに始まるものである。そのため,Gruber-Widal反応と呼ぶこともある。
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