抗原抗体反応・5
間接凝集反応(受身凝集反応)
松橋 直
1
1東大医科研アレルギー部
pp.432-433
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906770
- 有料閲覧
- 文献概要
抗体がその反応部位で抗原の決定基と結合することによって,抗原抗体反応が起こり,沈降物を作ったり,凝集塊ができたりするので,沈降反応や凝集反応の間には,本質的な差異がないことは前回に述べたとおりである.しかし,溶液性の抗原と対応する抗体との間で起こる沈降反応も,抗原の大きさを大きくして赤血球ぐらいにすると,凝集反応の形で観察することができる.こうすることによって,抗原の決定基と給合はするけれども,凝集反応が起こらない特殊な抗体(これを不完全抗体とか,非定型抗体と呼んでいるが)検出できるようになったり,抗原抗体反応の感度を高めることができるので,血清学的検査法にはしばしぼ応用される.次に例をあげながら述べてみよう.
抗グロブリン試験(クームズ試験)は,凝集能力をもたない不完全抗体(非定型抗体)と反応した赤血球は,1個1個ばらばらである.このような赤血球の浮遊液に,その抗体と反応して沈降反応を起こすことができるような抗グロブリン抗体を加えると,抗グロブリン抗体は,赤血球の表面に結合している不完全抗体(非定型抗体)と結びつきあうので,凝集反応が起こる.抗グロブリン試験の場合は,生体内で赤血球に抗体が結合している患者(自己免疫性溶血性貧血)があるので,このような例では,患者赤血球をとってただちに洗い,抗グロブリン抗体と反応させて検査するので,抗グロブリン試験直接法と呼ばれている(図1).
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.