技術解説
FTAテスト
河合 忠
1
,
河原塚 金造
2
1順天堂大学臨床病理学教室
2中央鉄道病院臨床検査科
pp.669-674
発行日 1965年8月15日
Published Date 1965/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915788
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はじめに
1942年にPangborn女史1)が,現在広く用いられているカルジオライピンを純粋に分離して以来,梅毒の血清学的診断法の特異性が著しく増加したが,一方では生物学的偽陽性(Biological False Positivity,BFP)の鑑別が重要な問題として注目をあびてきた。すなわち,実際に梅毒に罹患していない患者,たとえばマラリヤ,ライ,再帰熱などでも高率に陽性を示す。さらに,わずかではあるが妊娠,膠原病,種々のウイルス感染症などでも偽陽性となり,稀には健康人でも偽陽性を示すことがある2)。このようなBFPをぜんぜん臨床症状をもたない潜伏梅毒患者から区別することは非常に困難になつてきた。梅毒という病気の性質上,その検査方法に対しては100%の信頼性が要求されるわけである。この要求に一歩でも近づこうとして多くの学者が研究を進めてきたが,その第一陣として発表されたのがTPI(Treponema pallidum immobilization)テストである3)。このテストは梅毒感染初期には陽性率が低いが,特異性が非常に高く現在でも梅毒患者とBFPを示す患者との最終的鑑別方法として使われている。しかし,生きたトレポネーマを使用することと手技に高度な熟練を必要とすることのため特殊な2,3の検査室以外では実施することができない。
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