新しい検査法
FTA検査法
水岡 慶二
1
1東京大学医学部皮膚科
pp.383-385
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905844
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はじめに
PangbornによつてCardiolipinが精製された形で取出されて以来,それを抗原として用いることにより梅毒血清反応は鋭敏度ならびに特異度の点で急速な進歩をとげた。しかしながらCardiolipinは脂質であり,これを抗原として梅毒血清反応を行なつた場合にCardiolipinと反応するものは梅毒病原体に対する真の抗体か否か不明である。従つて梅毒でない場合にも陽性を示すことがある。かかる非特異的反応を生物学的偽陽性反応(Biological false positive reaction-略してBFP)と呼んでいるが,このBFPを除外する必要に迫られる場合がしばしばある。特に最近では,梅毒患者の減少と共に,梅毒としての症状もみられなくなつたので,梅毒の診断は血清反応が唯一の手掛りともいえる。それだけにBFPと梅毒を鑑別するための血清学的検査法が一層望まれるわけである。
かかることを目的とした検査法として,既に広く知られているものにTPIがあるが,その他にもTPA,TPIA,TPCF,RPCFなどが発表されている。これらはすべて,Treponema pallidum(TP)そのものあるいはそれから抽出した蛋白抗原を用いる検査法であり,従つてCardiolipin抗原を用いる場合よりも特異度が高いとされている。
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