総説
検査室における化学物質の安全管理
白戸 四郎
1
1神奈川県立衛生短期大学
pp.1411-1417
発行日 1978年11月15日
Published Date 1978/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914941
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化学物質の危険と言えば,かつては化学物質による直接的事故.例えば発火,引火,爆発,腐食,中毒などによる取扱者自身あるいはその周辺の障害を指すことが多かった.それらは概して高濃度の物質による化学反応であり,そのためいかなる物質も十分に希釈すれば安全という認識が広く定着してしまったようである.しかし希釈が問題を解決しないばかりかかえって途方もない困難に直結するということを知らしめたのは水俣病であった.薄まったとばかり思っていたものが生物によって濃縮されるという,予想もしなかったことが現実に起こったのである,一方,PCB汚染では難分解性,環境残留性の問題が大きくクローズアップされた.これらを契機として環境汚染が見直されてみると,更に新しい事実が発見され,すべての物質は廃棄しても我々と縁が切れるわけではなく,その物質が存在する限りその物質の性質は持続し,思わぬ所でその存在が証明されるという極めて当然のことが分かったのである.
かくてにわかにすべての化学物質に対する見直しが世界的規模で始まった1)。我が国においては「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」が1973年に成立し,水質汚濁防止法や大気汚染防止法と関連しない物質についても,広くこれを環境との関係において調査研究することとなった.
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