特集 酵素による臨床化学分析
定量法各論
5.中性脂肪
仁科 甫啓
1
1虎の門病院生化学科
pp.1304-1313
発行日 1978年11月1日
Published Date 1978/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914928
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はじめに
脂質分析の中で最初に酵素を用いた測定法が導入されたのはトリグリセリド(TG),すなわち中性脂肪であった.TGの酵素法は1960年後半に,既にEggsteinら1)によって提唱されたもので,まず血清TGをアルカリで加水分解し,得られたグリセロールに酵素であるグリセロールキナーゼ(GK)と補酵素のATPを,更に幾つかの酵素と共役させて,NADHの吸光度の減少を紫外部吸収(UV)で測定するものであった.同じ原理に基づく市販キットも前後して登場したが,化学的測定法に比べやや感度が低かったり,また用いる酵素が当時としては極めて高価であったため,日常検査として余り利用されなかった.しかしこの術式は正確度の点ではほぼ満足するものであり,現在でもTGの標準法の一つとして考えられている.
酵素法が登場してきた当初,酵素は動物由来のものが主であったが,最近ではこれらの酵素に加え,酵母や細菌からも容易にかつ安価に得られるようになり,それらの酵素を用いての幾つかの測定法が提唱され,実際に迅速化,微量化,簡便化が図られてきている.1977年度の医師会のサーベイ結果でも,TGの酵素法は測定法全体の80%にもなろうとしているが,これには市販キットの寄与が大きい.
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