学会印象記 第23回日本臨床病理学会総会
所期の企画目標を達成
細田 峻
1
1愛知県がんセンター研究所第1病理部
pp.318-319
発行日 1977年3月15日
Published Date 1977/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914305
- 有料閲覧
- 文献概要
初めに座長の赤崎氏が,我が国の癌研究会は,昭和2年日本病理学会の分科会の形で始まり,50名足らずの人たちが長与又郎博士の司会で主に病理形態学的研究発表を行う程度であったが,50年後の今日では日本癌学会の会員も6千名を越え,研究内容も,核酸,酵素,ホルモンなどの生化学,ウイルスならびに化学発癌,免疫,組織培養など,医学各分野の英知のすべてを結集して進められていると述べ,このシンポジウムがそれぞれの専門分野のエキスパートによってその領域の研究の進歩を解説し,将来への展望がなされる意義を強調した.これまでのシンポジウムが概して専門領域内でなされたのに比し,各分野を総合した今回のシンポジウムの企画は,実際各講演を聞くことができた聴衆の一人として,十分当初の目的が達せられた印象を受けた.
まず石橋氏は,造腫瘍性ウイルスが宿主細胞に感染し,形質転換を起こす際,DNAウイルスでは,アデノウイルスを例にとりながら,分子量23×106の7%のみが造腫瘍部分であることを示し,特に感染初期のタンパク合成と腫瘍抗原との密接な関連性を示唆する成績を発表した.一方,RNAウイルスでは,SV 40あるいはニワトリの肉腫ウイルスに例をとり,これらが宿主のDNAに組み込まれ,完全ウイルスとして再生される過程での形質転換機構の研究の進展を示した.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.