今月の主題 筋疾患と臨床検査
巻頭言
筋疾患と臨床検査
里吉 営二郎
1
Eijiro SATOYOSHI
1
1国立精神・神経センター
pp.619-620
発行日 1989年6月15日
Published Date 1989/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913989
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私どもが医学部を卒業して医師になった40年余り昔は,臨床検査といえば主治医がそれぞれ血液を調べ,血液像をみ,尿検査をし,血糖や尿糖を測定していたことを思い出す.臨床検査の内容については過去30年の間に素晴しい進歩を遂げ,一般的な血液検査のほかに多くの酵素学的,生化学的検査法が開発されたが,検査の手技や器機の進歩によって電気生理学的検査,生検による組織学的,組織化学的検査法,電子顕微鏡による検査など数えきれない程の多くの検査法が開発されてきた.主治医にとっても多数の伝票に印をつけ,もどってくる情報をいかに整理し,病状をどう判断するかがもっとも大切な仕事となっている.臨床の世界も情報診断の時代になりつつあるといえよう.
筋疾患に対する臨床検査としては,一昔前は血中,尿中のクレアチン,クレアチニンの測定が行われてきたが,もっとも画期的な検査は血清クレアチンキナーゼ(CK)の測定であろう.CKの測定によって筋の変性,破壊が起こっているか否かが容易に判断できるようになったからである.現在ではCKのアイソザイムを測定し,その病変が筋肉の病変によるものか,心筋に由来するものか,脳その他からきたものかが推定できるまでになっている.
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