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サイクリン依存性キナーゼ
滝澤 剛則
1
1愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所生化学
pp.84-86
発行日 1996年1月1日
Published Date 1996/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902608
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サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は,サイクリンとの複合体形成を通して活性化される分子量約35〜40×103の蛋白質リン酸化酵素群の総称であり,基質のセリン/スレオニン残基を特異的にリン酸化する.これまでに7種のCDKが発見されている.CDKをめぐるさまざまな蛋白質群が発見され,CDKの細胞周期や細胞増殖,癌化における中心的な役割が明らかになってきた.
細胞周期は,核内のDNAが複製するS期と細胞が分裂するM期,その間期であるG1,G2期,および休止期であるG0期に分けられている(図).細胞周期の進行は細胞内外のシグナルによって影響され,主にG1/SおよびG2/Mの移行期に存在するチェックポイントによって制御される.とりわけG1/S期は細胞が増殖因子刺激に応答したり,また,染色体DNAに損傷が生じた場合に一時的に細胞周期進行を中止したりする時期であり,この時期でのCDK活性が細胞周期制御に特に重要である.逆に,この調節機構に破綻が生ずると,細胞の癌化やプログラム細胞死(アポトーシス)につながると推定される.CDKは細胞周期を通じて量的変動が少なく,また,単独ではキナーゼ活性を持たないことから,このチェックポイントの構成分子としてCDK以外に細胞周期依存性に変動する不安定な物質の存在が予想されていた.
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