シリーズ・生体蛋白質の検査法・11
放射性物質を用いた微量定量法
西尾 康二
1
Koji NISHIO
1
1旭化成工業(株)ライフサイエンス総合研究所新薬開発研究部
pp.1551-1556
発行日 1986年11月15日
Published Date 1986/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913182
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はじめに
蛋白質の定量は,現在でも生化学研究の基礎である.蛋白質分子の機能を解析する際には,微量の定量法が必要である場合が多い.
筆者が放射性物質を使用して微量な蛋白質を定量する方法を考案したのは,研究上の必要性からであった.蛋白質合成反応の初期反応において,tRNAと特異的なアミノ酸を結合させアミノアシル—tRNAを生成させる酵素,すなわちアミノアシル—tRNA合成酵素が知られている.この酵素は20種のアミノ酸に対応して,20種類の分子種が存在する.そして,この酵素の分子量は5万から38万までと幅広く,その四次構造もモノマー(α)からテトラマー(α2β2,α4)と多様性が大きい.筆者はこの酵素の高次構造と酵素反応の特異性とについて,カイコの後部絹糸腺のグリシル—tRNA,アラニル—tRNA合成酵素を材料に研究していた.グリシル—tRNA合成酵素は非常に稀薄な濃度でゲル濾過を行うと,活性型のダイマーから不活性型のモノマーへと解離する.このことの証明に,解離に伴う酵素の分子量の変化を実験的に示すことが必要とされた.その際ゲル濾過した各フラクションの酵素活性を測定することにより酵素の活性ピークを検出し分子量を判定できるが,さらに蛋白質のピークとして示すことが要求される.定量すべき酵素蛋白質の濃度は1μg/ml以下と非常に低いもので,通常の蛋白質の定量法(例えばLowry法,紫外吸収法)では測定が困難であった.
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