シリーズ・癌細胞診・6
絨毛性疾患
工藤 隆一
1
Ryuichi KUDO
1
1札幌医科大学産婦人科学教室
pp.701-704
発行日 1985年6月15日
Published Date 1985/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912597
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
絨毛性疾患は胞状奇胎,侵入奇胎(従来破壊性奇胎と呼ばれた),絨毛癌の3疾患を総称する.かつて絨毛性腫瘍と称されていたが胞状奇胎と侵入奇胎は病態論的には同一なもので腫瘍性とは考えがたいとして絨毛性疾患として総称されている.したがって腫瘍と呼べるのは絨毛癌のみといえる.本疾患の診断にあたって,HCG産生という確実なマーカーや,超音波診断・骨盤血管造影といった有力な手段があるために細胞診の役割は少ないとされてきた.しかし症例によっては推定診断に有用な場合もあり,限界はあるものの広く用いられてもよい診断法である.
奇胎・絨毛癌の組織学的鑑別診断の要点は絨毛形態の有無にある事から細胞診で両者を鑑別する事はそもそも困難ともいえる.しかしながら絨毛上皮細胞の異型度は流産時の正常絨毛上皮細胞,奇胎,絨毛癌との間に差が認められるので,異型度の程度から疾患の推定診断に役だたせうる.細胞の採取にあたって奇胎では腟細胞に出現する事は流産が起こるまでほとんどありえない事,絨毛癌では内膜吸引,内膜掻爬でなければ絨毛上皮細胞が得られにくい事を留意する.一方腟・外陰の転移巣からは擦過細胞で採取し,肺転移がある場合は喀痰の中に絨毛上皮細胞が認められる場合がある.以下奇胎と絨毛癌の細胞像について述べる.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.