シリーズ・医用基礎工学入門・6
音・1
中山 淑
1
Kiyoshi NAKAYAMA
1
1上智大学理工学部電気電子工学科
pp.697-699
発行日 1985年6月15日
Published Date 1985/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912596
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音と臨床医学
音は物質中を伝搬する力学的振動の波である.臨床医学に工学が導入される以前から音は臨床検査診断技術のうちでもっとも利用される物理現象の一つであった.肺,心臓などの聴診は言うまでもないが,打診も体外から音を与えて生体の応答を観測しているのであり,触診も超低周波の力学的振動(厳密には音とは呼ばないが)に対する生体の特性から診断情報を得ているのである.また間接的ではあるが血圧測定におけるKorotkoff音の聴診も重要な音の利用法の一つである.工学技術が導入されるようになってからは聴診器を発展させた心音計などが広く用いられるようになったが,打診を高周波の振動を用いて行っていると考えられる超音波診断装置が現在もっとも強力な診断機器の一つであることは言をまたないであろう.これらの診断技術を正しく活用するのに基本となるのは生体組織の力学的特性の正確な理解である.
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