今月の主題 神経・筋〈生理検査〉
技術解説
聴覚脳幹誘発反応
橋本 勲
1
,
石山 陽事
2
Isao HASHIMOTO
1
,
Yoji ISHIYAMA
2
1東京都立府中病院脳神経外科
2虎の門病院生理学科
pp.1092-1101
発行日 1983年10月15日
Published Date 1983/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911989
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音刺激を与えて頭皮上から記録される短潜時(8msec未満)の反応は聴覚脳幹誘発反応(ABR)と呼ばれ,6〜7個の波成分から構成される.ABRはこれより遅い反応と異なり,個人差が少なく,再現性に富み,意識のレベルや麻酔の影響を受けないという点できわめてユニークな反応である.特に,ABRの各波成分の発生源が脳幹聴覚上行路において一定の局在性を持つことが明らかにされて,神経学的機能診断法としての評価が確立されたと言える.ヒトABRの発生源はI波:第8神経末端部,II波:同側蝸牛神経核,III・IV波:橋部,V波:反対側下丘,VI波:内側膝状体,そしてVII波は不明,である.したがって,おのおのの波の変化から脳幹の障害部位が推定できる.中でも脳幹部の病変はCTスキャンでも診断が困難なことも少なくないので,これを補完する大事な検査法となっている.しかし,脳幹に発生した電位変動が頭皮上の電極に伝播するまでにかなり減衰して(1μV以下),自発脳波(数十〜100μVの中に埋もれて見えなくなってしまう.そこで,これらの微小電位を検出するために,増幅と加算平均が行われる.
本稿では,ABRの記録法の原理,装置,導出法,検査手順について解説し,最後に臨床応用について述べる.
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