新しい神経・筋機能検査・2
聴性脳幹反応—聴性誘発反応の早期成分
加我 君孝
1
,
高橋 邦丕
2
,
八木 聡明
1
,
鈴木 淳一
1
1帝京大学・耳鼻咽喉科
2東京労災病院耳鼻咽喉科
pp.873-881
発行日 1977年8月15日
Published Date 1977/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914445
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聴性脳幹反応(Auditory Brain Stem Respo-nse)は,聴性誘発反応の早期成分で1970年Je-wette5)らによって初めて報告された.音刺激には主に立ち上がりの鋭いクリックを使用し,毎秒10〜30回の頻度で音刺激を与え,約2,000回の誘発平均加算を行うと,頭皮上の記録で,分析時間10msec内に7つのピークから成る連続波形が得られる.その後の研究から,この反応(Audi-tory Brain Stem Response;BSRと略す)は従来のAuditory Evoked Response (AER)として知られる聴性誘発反応の遅い成分とは異なる特徴が明らかにされた.
AERは大脳誘発反応と考えられ,刺激の種類を異にする視覚誘発反応(VER),体性知覚誘発反応(SER)と反応潜時も波形も大体類似していることから,刺激そのものは,それぞれの末梢感覚装置を介するが,反応そのものは非特異的であると考えるのが一般的である.AERは臨床的には,主に乳幼児,脳神経疾患症例における他覚的聴力検査として使われてきた.ところが睡眠の深度に影響され反応の判読が困難となったり,反応の再現性に欠ける点があり,聴力の域値の推定や,聴神経路の中枢での障害部位の診断には十分信頼に足るものではない.そのために応用範囲や研究者も限られていた.しかし,BSRは以上の欠点を克服する長所がいくつかある.
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