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I.はじめに
音刺激に応じて,聴覚求心路から一連の神経電気活動が誘発される。すなわち末梢の受容器電位である蝸牛マイクロホン電位と加重電位に始まり,第1次ニューロンの蝸牛神経腹合活動電位,脳幹聴覚上行路を構成する神経線維路の活動電位と中継核ならびに皮質のシナプス電位よりなる。これらの神経電気活動は頭皮上から聴覚誘発電位として記録される。とくに短潜時(10ms以内)の成分は主に脳幹に起源することから聴覚脳幹誘発反応(auditory brainstem response,ABR)と呼ばれる。この電位はインパルスが皮質に到着する以前に発生し,容積導体を介して記録される遠隔電場電位である。この誘発電位の特徴は個人差が少なく,再現性のよいことである。またABR各成分の発生機序が解明されつつあることとあいまって,研究ならびに臨床における今日のABRの発展がみられるわけである。しかし現在でもまだ充分に解明されていない部分も少なくないのも事実である。
ABR発生機構の複雑さは上オリーブ核や外側毛帯核などの中継核において,ある線維はシナプスを介するがこれを介さずそのまま通過上行するといった線維結合パターンの多様性に一部起因する100,150)。また他の感覚求心路と比較して中継核から次の中継核が解剖学的にきわめて接近していることも,ABR発生源についての時間ならびに空間解像を困難にしている大きな原因である.これら解剖学的複雑性のほかにbimodalな第8神経活動(N1,N2)があげられる。末梢における2群の神経活動が脳幹聴覚路に入力される結果,この各々に対応して種々のレベルにおいて2群の電気活動が誘発されることもABR発生機序の解明を困難にしているといえる90)。
Identification of the neural generator (s) of the scalp auditory brainstem responses (ABR) relies basically on two experimental steps. The first is to record depth potentials from various auditory structures within the brainstem and to correlate these potentials to the surface ABR. If a depth potential concurrent with the scalp ABR component is found, then this local potential should be traced to the surface in order to be sure that this actually volume conducts to the surface to contribute substantially to the scalp ABR component.
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