分離分析の技術Ⅰ・3
セルロースアセテート膜二次元電気泳動法—血清蛋白質の分画・同定
大橋 望彦
1
Mochihiko OHASHI
1
1東京都老人総合研究所生化学研究部
pp.335-344
発行日 1982年3月15日
Published Date 1982/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911506
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病院の検査室の中で,血液の検査,特に血清を用いた検査は必須であり,ルーチン化されている.その検査項目の一つとして,蛋白分画がある.この蛋白分画がルーチンに行えるようになってからまだ日が浅い.すなわち,この10数年の間で,蛋白分画がルーチンに扱えるだけ容易に操作できるようになったからである.この分析技術が簡便化され,分画が容易になった最大の理由は,用いられる方法の再現性が良いうえに,支持体が常に一定規格のものとして入手可能となったことである.
電気泳動法の支持体として,蛋白の分画に多く使用されているのは,デンプンゲル,寒天,アガロース,セルロースアテート膜,ポリアクリルアミドゲル,濾紙などである.このうち,濾紙は初期のころ普及したもので,当時のデンプンゲルや寒天による方法と比べ,扱いやすさの点では抜群に良かった.しかしその後,セルロースアセテート膜が用いられるようになってから姿を消してしまった.それは扱いやすさの点で後者も同様に良く,それと同時に分離能が向上したことが大きな要因である.しかし一方,ポリアクリルアミドゲルを用いたディスク電気泳動法の発達は,その卓越した分離能により他の追従を許さなかった.現在では,研究室での研究用分離法としてきわめて広い普及がみられるのは,この分離能の良さによるところである.
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