技術講座 病理
組織標本の作り方・2—包埋—パラフィン包埋を中心に
油井 慎嘩
1
,
小野寺 令造
1
1国立東京第二病院病理科
pp.442-444
発行日 1977年6月1日
Published Date 1977/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201378
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組織が十分に固定されたならば,いよいよ組織を薄く切るための操作に移るわけであるが,組織が十分に固定されても,3〜5μぐらいの厚さに薄切することは困難である.更にこれらを硬くし,しかも組織全体が平均的硬化状態にならなければ,一定の厚さに薄切することは不可能である.また固定液に長くつけておくと組織に変化を生じ,染色性が悪くなる.包埋しておけばいつでも良好な染色標本を得ることもでき,組織の保存にも便利である.パラフィン包埋することにより何枚でも薄切が可能となり,特殊染色が有効となってくる.
包埋剤には一般に非親水性であるパラフィンが用いられる.パラフィンは水やアルコールに溶解する物質を持たないが,一方組織には多量の水分が含有されているので,パラフィンを組織内に満遍なく浸透させ,しかも硬度を一定にするには,組織主要成分である水分を除去する操作,いわゆる包埋の前処置である脱水脱脂操作が必要となってくる.脱水は標本を作製するうえで重要なステップであり,十分注意して行うのは言うまでもない.なぜならば,脱水不十分はパラフィンの浸み込みを妨げ,その結果薄切は困難となり,ひいては染色不良をまねき,所見を誤らせる原因となりかねないからである.
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