論壇
病院病理解剖とその振興について
畠山 茂
1
1横浜市大・第2病理
pp.1200-1201
発行日 1974年11月15日
Published Date 1974/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908726
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病理解剖の持つ意義
現代医学における病理解剖の持つ意義とか重みは,ますます増大していると思われる.その原因はいろいろあるが,その一つとして最近の臨床検査の進歩に基づく診断技術の向上があろう.たとえば,現在の肝や腎機能検査はわれわれにそれら臓器の機能異常や病因について以前に比し格段に正確な知識を与えてくれるようになった.ごく軽い肝炎や腎機能異常も診断でき,生検材料との対比から機能異常と形態の相関についても,かなりのレベルまで知ることができるようになりつつあるし,また小さな腫瘍の存在の有無なども将来かなり正確に指摘できるようになるだろう。診断技術の向上には自己検証を伴うフィードバック過程を伴っていなければならないのは当然で,検証の最有力な手段が病理解剖であることはいうまでもないだろう.
病理解剖は,生命の終着点で行うものであるから,生前の検査から推測されたすべての病態をそのままとらえることは不可能である.しかしこれまで蓄積された病理学の知識を総動員して正確な病気の診断を下すことはできよう.この場合の正確さとは疾患の総合的な把握理解であって,細部にわたった,たとえば細胞の分子生物学的な変化の解析などは,病理解剖の持っている方法論上の制約によって大きくはばまれているのが現状であろう.しかし,そのことによって病理解剖の意義はいささかも減ずるものではない.
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