保健行政スコープ
厚生科学の振興
小島 光洋
1
1厚生省大臣官房厚生科学課
pp.70-71
発行日 1989年1月15日
Published Date 1989/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207859
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●科学技術振興の動向
厚生省の大臣官房の中に,昨年10月1日から「厚生科学課」が誕生した.これは,従来同じ大臣官房の総務課にあった「ライフサイエンス室」を拡充し,厚生省における科学技術を総合的に取りまとめていこうとするものである.「厚生科学」は保健医療,福祉,生活衛生等のニーズに応える科学技術分野という概念として捉えることができ,国民のクオリティー・オブ・ライフ(生命・生活の質)を高めていくことを目的としている.
近年の社会経済の急激な変化は,物質文明の限界を呈示する結果となり,これに対して真の豊かさとは何かが問われるようになっている.一方,先端技術を中心とする目覚ましい科学技術の進歩は,国民生活を飛躍的に向上させることを可能にしつつあり,まさにこの科学技術の成果を国民生活に的確に活用していくことが,厚生行政に求められるようになった.特に従来の医学の領域に加えて,分子生物学,生体工学等関連の学問分野を加えて生命現象・生体機能を解明し,その成果を広範囲に人間の福祉に役立たせようという指向性が重要であるといえよう.
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