Senior Course 病理
細胞組織化学の歴史(1)
畠山 茂
1
1横浜市大第2病理
pp.121
発行日 1973年1月15日
Published Date 1973/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907974
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最近の位相差顕微鏡や電子顕微鏡などの観察手段の発達は,われわれに生きている細胞構造の動きや,生体組織の微細構造を分子レベルの大きさまで知らしめてくれるようになったが,機能との関連についてはまだ知るところはきわめて乏しい.一方,構造の合一性が保たれて,初めて十分なる機能の活動や発展があることは疑う余地のないことであるから,細胞組織の機能や変調を理解するのに,構造の変化と密接した化学物質や酵素やそれらの反応機構を知ろうとする立場は,有力なる学問的方法論を提供するものである.このような立場から生まれてきたのが組織化学や酵素組織化学といった分野で,近年目覚ましい発展をとげつつあり,臨床検査の形態学部門への応用も将来大いに盛んになることが期待される.
無機化学的手段を形態学に利用した単純明快な組織化学的成果は,鉄染色であろう.組織内に含まれる鉄には2価と3価があるが,組織内に多い3価の鉄に対しフェロシアンカリウム液を作用させ,青色の錯化合物(ベルリン青)を作り局在化することができる.すでに19世紀後半に試みられ,組織・細胞内の褐色色素中に鉄の含有される血鉄素(hemosiderin),ヘモフスチン(hemo-fuscin),類血色素(hematoidin)が同定された.
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