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私は今から15年前の本誌の創刊号(1957年4月)に巻頭言を書いた記憶がある.その間,臨床検査領域の進歩発展はまことに目ざましいものがある.医学の終極の目的は申すまでもなく臨床医学であり,疾病の原因,疾病発現までの広い意味の潜伏期,現在の症状,疾病の診断,それに対する適切なる治療,予防へとつながるものである.この臨床医学によい効果をもたらすものは,臨床家の努力もさることながら,その根底をささえるものは科学であり,特に基礎医学である.そうして,この基礎的医学,科学の成果を実際に臨床の場に直結する役割を果たすものが,臨床検査であろう.したがって,臨床検査に携わる方々は,基礎医学,科学から新しい進んだ学問,技術をとり入れ,これを臨床の人々に提供しなければならない.一方,臨床家は患者を診察して直接,診断・治療に携わるのであるが,それとともに,絶えず必要な資料を検査室に送り,そこから得られる分析成果を臨床の場に導入し,両者合わせて,より正確な診断・治療を行なうことが可能となる.
臨床検査に携わる方々にお願いしたいことは,このルーチンワークの正確性を常に身につけておかなければならないことであり,この正確なルーチンワークを通じ,始めて異常所見が日常の流れ作業の中から自然に発見されうることをよく認識していただきたいのである.このようにして通常見られる病的所見のほかに,時にはまだ記載のなかったまれな異常所見も捕捉しうるのである.このような連帯作業により,日常の臨床の場から患者を通じてわれわれは多くの知識を得ることができるわけである.すなわち,この一見単純な作業により,日々の診断が正しく行なわれ,患者に恩恵を与えることができ,また医学の進歩にも大きな寄与をなしうるのである.すなわち,臨床検査は臨床に直接寄与すると同時に,医学研究のうえにも大きな貢献をなしうることを感じていただきたいのである.
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