特集 錐体外路系・I
肝レンズ核変性症の臨床—本邦における報告例から
冲中 重雄
1
,
吉川 政己
1
,
茂在 敏司
1
,
渡辺 晴雄
1
,
寺尾 寿夫
1
,
荻原 一晃
1
1東京大学冲中内科
pp.883-890
発行日 1959年9月5日
Published Date 1959/9/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901712
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緒言
嘗て肝レンズ核変性症の1例(冲中内科第II症例)に就いて臨床的報告をした際,Rauhが63例に就いて症状を検討した統計成績を引用した。従来本邦では此の疾患は稀有なものとして各研究者がそれぞれの経験例を各々の立場から検討した結果を報告して来たが,これらを集計してみた報告は見当らない。しかし最近此の疾患の病態生理成因が漸次明らかになるにつれその報告例も増し,日常の診療においても可成り重要なものとなりつつある。そこで本邦における報告例を集めて示して見たいと思う。但し昭和20年以前の報告は不備のものも少くないので,昭和21年以後の報告を対象とした。猪瀬も指摘しているように嘗て本症として報告されたものの中に,今日の我々の概念からすれば,当然区別されねばならぬものも含まれている。門脈系の奇型を伴い脳の組織標本においても本症の特徴とされるAlzheimer I型細胞,Opalsky細胞も見られない宮尾の症例はこれに相当するもので,肝レンズ核変性症と断定することを控え省略した。松浦の報告例は松岡のそれと同じものであると老えられるので1例として取り扱つた。又,文献の不備から簡単な学会報告抄録に頼らざるを得なかつた主として眼科的所見を中心とした報告は省略した。此の中には田野,村井,吉村の3報告が含まれる。
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